サージング解析プログラムの挙動解明
きっかけ
昨日、私のwebページをご覧になった方から、サージング解析プログラムに関するメールを頂いた。
下が、その疑惑のページのコピーである。 図を見てわかるように。
サージング解析では、「制水口(ポート)径が小さい場合、遮断時間を大きくしていくと、最高上昇水位が大きくなる」とされているが、これは本当なのだろうか?という疑問である。 確かに計算結果はそうなっているし、そうコメントしている。これに関してどのように解釈したら良いのか解明することになった。
試し計算
現象を確認するため、以下の条件でサージング計算を行ってみた。 変化させるパラメータは遮断時間であり、ポート径は比較的小さい2.5mとしシャフト径は現象が顕著に出ている10mとした。 貯水池水位は区切りよくEL.1100mとし、サージタンク頂部標高EL.1150、サージタンク底部標高EL.1050(シャフト高さ100m)とした。
解析パラメータを下表に示す。
項目 | 採用値 |
---|---|
解析条件 | 負荷遮断 |
シャフト内径(断面積) | D=10.0 m (F=78.5 m2) |
ポート内径(断面積) | Dp=2.5m (Fp=4.906 m2) |
ポート流量係数 | Cd=0.9 |
圧力トンネル延長 | L=2553.370 m |
圧力トンネル内径(断面積) | d0=8.2 m (f=52.783 m2) |
圧力トンネル損失係数 | c=0.179 |
初期流量=>遮断時流量 | Q=340 m3/s => 0 m3/s |
遮断時間(線形遮断) | t=0.1, 1, 10, 100, 1000 sec |
貯水池水位 | EL.1100 |
サージタンク頂部標高 | EL.1150 |
サージタンク底部標高 | EL.1050 |
計算結果は以下の通り。
コメント
上図から以下のことがわかる。
- 遮断時間t=0.1secからt=10secまでは遮断時間が増加しているにも関わらず、最高上昇水位が増加している
- 遮断時間t=100secでの最高上昇水位は遮断時間t=0.1secでのものより小さくなっている
- 遮断時間t=1000secでは顕著なサージング現象は発生せず、定性的には期待される挙動となっている
よって、計算結果と想定される実現象に致命的な差異はないと予想されるが、遮断時間が比較的小さい領域では、遮断時間を大きくするに連れ最高上昇水位が上昇するという計算結果の解釈が課題として残る。
以 上